かみさぎ花だより

かみさぎニュース73号掲載分

古くは野菜として、また、油を採るた栽培されてきた 弥生時代以降から葉物野菜として広がってきたようである。江戸時代から植物油として灯油原料として重宝された。 通称ナタネアブラ。菜の花は春の象徴の一つ。

 

            菜の花や 月は東に 日は西に                                  与謝蕪村

             はてもなく菜の花つづく夕月夜  母が生まれし国美しき        与謝野晶子

             桃に添えて 挿す菜の花の 光かな                            久保田万太郎

                「菜の花畑に入日薄れ   見渡す山の端霞深し  

                    春風そよ吹く空を見れば    夕月かかりて匂い淡し」    唱歌「朧月夜」より 高野辰之


かみさぎニュース72号掲載分

土筆は上鷺宮辺りで今でも街路樹の根元とか、ちょっとした空き地の片隅に見つけることがある。「東京も この界隈の 土筆かな  寺田寅彦」まさに現代の土筆にピッタリの俳句。子どもの頃、祖父母と土筆の佃煮を作るために、土筆の袴を一緒に取ったことを思い出した。

 佐保姫の筆かとぞ見る つくづくし

             雪かきわくる 春の景色は    藤原為家

      現代語訳:春の女神の佐保姫が使っている筆かと思って、よく見た

           ら何と土筆だ。残雪をかき分けて顔を出している土筆の

           様子は春の景色そのものだ。

       

       給食の 土筆ごはんの ほろ苦し  

                    みやこわすれ(NHKラジオ句会) 


かみさぎニュース71号掲載分

「♪ドングリコロコロどんぶりこ…」むかしからの童謡にもあるように「ドングリ」は親しまれてきた。左の写真のようにドングリという総称の中で大きく四種類に分けられるようだ。コナラはクヌギと共に日本の広葉樹雑木林を構成していた主要の木々である。炭の原料やシイタケの原木になる。白樫は木刀等になる堅い木。ドングリはアクを抜き、粉にすれば食用にもなる。縄文時代から生活に密着していた。

 

 なにゆえか 心弾み八十路(やそじ)吾 団栗一つを 拾い帰れり

                 諸永まさ子(「姫由理」2008)

    手の中に 団栗という 故郷かな    伊藤 憲子

               保育児の 手に団栗や 得意顔     久貝 芳次  


かみさぎニュース70号掲載分

 盛夏で昔から特に目立つのが百日紅か。この花は白もあるが燃え上がる赤が主…和名が「サルスベリ」。猿は木登りが上手だが、時には滑り落ちるほど樹皮が滑らかなところから、この名がつけられている。納得。さらに別名の謂われは、次から次へと花が咲く期間が長いことから百日紅「ヒャクジツコウ」。これも充分に説得力あり…因みに中国でも百日紅となづけられている、と。江戸時代前に渡来したと言われている。

         百日紅 夏の終わりの 激しさに        山口青邨

         太陽の 熱の白さや 百日紅          鷹羽狩行

         ゆったりと 風とくつろぐ 百日紅       川崎郁子

         炎天の 地上花あり 百日紅          高浜虚子

         散れば咲き 散れば咲きして 百日紅      加賀千代女


かみさぎニュース69号掲載分

「♪夕焼け小焼けの赤とんぼ・・・山の畑の桑の実を小籠に摘んだは幻か」三木露風。童謡の「赤とんぼ」。桑は古来より蚕の重要な餌。そして蚕からもたらされる絹はシルクロードの名の通り全世界の貴重品。今は蚕も桑も目にすることがほとんどなくなったことは寂しい。しかし昨今、こ時期に園芸店にはマルベリーの洋名で甘い実を人が味合う植物とし登場する。
   生あたたかき 桑の実はむ(食む)と 桑畑に幼き頃は よく遊びけり

                               佐藤佐太郎

   黒くまた赤し 桑の実 なつかしき                 髙野 素十


かみさぎニュース68号掲載分

杏子の開花は、寒い冬に別れを告げ、心地よい春風が吹き始める頃、桜前線の北上と同時期の3月下旬から4月の上旬になる。梅干しに適している豊後梅は因みに杏子との中間種。中国原産で梅と共に渡来した、と言われている。古代ローマには、すでに伝わり西洋名はアプリコット。今ではジャムの品名に使われる。2500年前後の古代中国の仁医の話。貧しい人の治療代の代わりに薬効もある杏子の木を植えさせ、やがて林に。それが杏林伝説(庶民に寄り添う名医伝説)に。

       山梨の 中に杏の 花さかり             正岡 子規

     見上げれば 空に溶け入る 花杏子          吉岡 純子


かみさぎニュース67号掲載分

春の七草で一番、食べられている「セリ」を載せました。実は小学校低学年?(1950年代後半)の頃、祖母たちに連れられ芹摘みに行きました。千川(当時は千川通りがなく、細い道の脇に狭く深い川が流れていました。現在、川は暗渠になり川岸に植えられていた桜並木を残すのみです)と、西武池袋線の中村橋駅、目白通り(当時はなかった)を越え、石神井川沿いの祖母曰く「貫井の田んぼ」へ。田畑が広がる65年以上昔のセリにまつわる話です。

    七種(ななくさ)の 初めの芹ぞ めでたけれ       髙野 素十

            泥川を 芹生ひ隠す うれしさよ            正岡 子規


かみさぎニュース66号掲載分

 柚子は古来より日本文化と密接に結びついている。まず12月の冬至には柚子湯。さらに日本料理等の食文化とも切り離せない関係にもある。また漢方薬としての薬効も捨てがたい。最近では名前にも使用される。その香りと味覚から柚子大根、柚子和菓子(柚子皮の甘菓子等)、柚子ジャム…中国が原産地らしい。奈良時代(続日本紀:772年の6月に隕石が落下。その隕石の大きさを柚子の実に例えている)には栽培されていた。

     穏やかなる年の 夕日の沈むとき 先頭の柚子湯より 吾かえるなり

                               土屋 文明

   冬至湯や 柚子が優しく 肌に添う                夏目 満子


かみさぎニュース65号掲載分

 この季節、中学生の思い出が強くある。登校の途中に金木犀の木が…幼心に花の香と台風が印象的だった。このワンセットが記憶の底に。

 中国原産で一般的に桂花と呼ばれるそうだ。和名の由来は樹皮が犀(サイ)の脚に似ているために「木犀」と名付けられたと。一番は芳香剤として有名。漢方での薬効も古来より重宝される。健胃作用、安眠効果等。日本には江戸時代に渡来。

  秋の夜 マスク外して遠回り  姿見えねど 気配の香り       米津 玄師

  台風の 行方は知らず木犀の 花の黄金の 微塵散り敷く     村瀬  廣

  木犀の 香りほのかにただよふと  見まわせど 秋の光のみなる 窪田 空穂 


かみさぎニュース64号掲載分

 お盆に合わせて鬼灯(ほおずき)にした。調べてみると日本最古の書物、古事記にでているという 。神話で有名な八つの頭を持つ魔物、ヤマタノオロチの不気味に輝く赤い目を鬼灯(当時はアカガチといった)に例えた、と。また平安時代に書かれた日本最古の薬草本に解熱、鎮痛、冷え性等の効能あり、と。お盆近くになると花店の店先に並べられる。また7月に浅草寺において江戸時代から続く鬼灯市が立ち並ぶ。鬼灯が庶民に馴染んでいた証であろう。

 紅鬼灯を ふふめる吾子は幼ければ 凛凛として 我は生きねばならぬ  

                                                                                              木俣 修

 鬼灯の 実はふっくらと 涼包み                     白桂

 鬼灯を 含みて鳴らす 昭和の音                        中山泰山 


かみさぎニュース63号掲載分

 若葉色とは生えて間もない明るい草木の葉の黄緑色。3月中旬から4月初旬にかけて落葉樹の山、森、林がこの色に染まり始める。無粋な茶色の梢のみの木々の枝が白色に芽吹き始め、さらに淡く薄い若葉色に移ろう様々な緑色のグラデーション。上鷺宮で林として目にすることは60年近く前に失われて久しいが、上鷺宮5丁目の八成公園等で落葉樹の若葉色を味わっては如何か。

    きらきらと 若葉に光る 午後の風         正岡子規

    めざましき 若葉に色の 日の色の  揺れを静かに 楽しみにけり                                      島木赤彦


かみさぎニュース62号掲載分

 春は名のみの早春に、どこからともなく心地よい香りを漂わせ、思わず沈丁花を探そうと足を止めさせる、春を告げる花でもある。中国が原産で日本では室町時代頃には栽培されていた、という。「じんちょうげ」「ちんちょうげ」ともいう。沈丁花という名は香木(心地よい香りの木材の白檀等が有名)の一種、沈香のような香りと、丁子に似た花を付けることから名付けられた。また、日本三大香木(沈丁花、くちなし、金木犀)にも挙げられている。花の煎じ汁は歯痛、口内炎等の民間薬として使われたという。

  沈丁花 いまだは咲かぬ 葉隠れの くれなゐ蕾 匂ひこぼるる

                               若山牧水

  沈丁花 雨しめやかに いたる夜の 重き空気の なかに にほえり

                               金子薫園


かみさぎニュース61号掲載分

 初冬に黄色い花を咲かせる「つわぶき」。名前の由来は艶葉蕗(つやはぶき=艶のある葉の蕗)から転じたとの説もある。花の少ない冬に開花するので観賞用として重宝される。薬用に解毒、皮膚病、打撲、火傷治療を目的に生薬として用いられる。花より葉の色、形の差異が珍重される向きもある。

    つわぶきの 花咲き出でて この里も 弱き陽ざしの 冬になりけり

                                  白桂

    蝶ひとつ 飛ばぬ日影や ツワブキの花                                          

                               榎本其角


かみさぎニュース60号掲載分

 古来より自然美を「花鳥風月」「雪月花」と評している。今回は「月」。月は地球上どの神話等にも登場する。かぐや姫は月の住人。つい100年ほど前の夜は、まさに闇夜。だからこそ月明り、星明りという言葉が生まれた。その中で月見…花見…雪見にと、季節の移ろいの美しさを愛でる文化があった。

   行く末は 空も一つの 武蔵野に

           草の原より 出づる月影        九条良経

   現代語訳(見渡す限り空と交わるような広大な武蔵野の草原に、今月が昇って

   いく)※鷺宮あたりも武蔵野の一帯。新古今の和歌であるから、今を遡ること

   800年以上前の情景 

           天の海に雲の波立ち 月の船 

            星の林に 漕ぎ隠る見ゆ       柿本人麻呂

   現代語訳(満点の空は海のよう。幾ばくかの雲は波のように見える。そこに月

   の船が星々の林に漕ぎ入り、やがて移ろっていく。何て壮大な夜空よ。) 

                     名月や 池を巡りて 夜もすがら

                                                                  松尾芭蕉

           月を待つ 立待月と 言う名あり    高浜虚子


かみさぎニュース59号掲載分

 この花ほど現代の我々と密接に結び付いた花はないでしょう。小学生の夏休みの課題として朝顔の栽培と観察が今でも続いているのではないでしょうか。朝顔は朝咲き、その後昼にはしぼんでしまう「朝美人」に例えられる儚き花。日本では奈良時代末、遣唐使が種を薬として持ち帰ったと言われています。朝顔の種は牽牛子(けんごし)と言い、粉末にして下剤や利尿効果のある貴重な漢方薬として重宝したようです。世界的に見てもこれほど形態が多種多様に変化した園芸植物は他にないといわれ、特に江戸時代に品種改良が進んだようです。これが発展して明治時代初期から入谷の朝顔市が始まりました。

   朝顔に つるべとられて 貰い水            加賀千代女

   暁の 夢の余波(なごり)を眺むれば これもはかなき 朝顔の花

                              藤原定家 


かみさぎニュース58号掲載分

 4月初旬に白い房状の花を付けるよく見かける花、馬酔木(あせび)。枝葉に有毒成分があり、馬が食べると酔ったように足が萎え「脚じひ」と呼ばれ、「あしび」から「あせび」となった、と言われる。漢字もその由来に基づいている。葉を煎じたものは殺虫剤に用いられることもある。毒部位は全株。近年では自然農薬として利用する試みがなされている。

 

 吾が背子に 吾が恋ふらくは 奥山の 馬酔木の花は 今盛りなり  万葉集

現代語訳(あなたの事を恋しく思っている私の恋は、奥山に咲く馬酔木のように

    今、燃え上がっていることよ)


かみさぎニュース57号掲載分

 木瓜(ぼけ)も春先に目を楽しませてくれ、町内でもよく見かける花です。この花は紫陽花のように微妙に色を変えていきます。淡い白から次第に紅を増して朱色にうつろっていきます。開花後は、ビワ位の実をつけ果実酒にも使われます。この果実は漢方薬になっています。

 また、木瓜は(もっこう)とも読み、家紋にもされています。大河ドラマ「麒麟がくる」で出てきた織田信長の家紋は織田木瓜。木瓜にもいろいろなデザインがあります。

      蹴爪づく 富士の裾野や 木瓜の花          夏目漱石

      木瓜の木の くれなゐうすく茂れれば

             雨は日ごとに 降りつづきけり     長塚 節

      だまされて をれば楽しき 木瓜の花         加藤楸邨

      山吹に 木瓜のまじりし 垣根かな          正岡子規


かみさぎニュース56号掲載分

 「柊」はまさに冬そのものの植物です。町内でも生垣として植えられています。花は白く、赤い実がなり特に堅く棘ある葉が特徴。柊はキリスト教では十字架に架けられるキリストに柊(イバラ)の冠を被せたとされ復活不死の象徴とも。日本では節分に魔除けとして上の写真のように柊にイワシ、目刺しをを刺して玄関等につるす年間行事が知られています。柊には洋の東西文化に不思議な共通点がありました。

          柊をさす母に寄り添いにけり         高浜虚子

          ひひらぎの 白き小花の咲くときに

              いつとしもなき 冬は来むかふ    齋藤茂吉


 武蔵丘高校正門を背に、東に向かって右側の畑脇には、道沿いにかつてお茶の木が植えられていた。私は初冬に白い花をつける佇まいが大好きである。今は町内で見ることはない。茶花は一輪挿しに似合う清楚な花。日本茶は、今や世界的に愛される飲み物であり、菓子にも使用されている。また、昔から歌やことわざにも出てくるほど実生活に密着している。茶摘みの歌… ことわざは「茶番劇、娘十八番茶も出花、無茶苦茶…」

           茶の花に かくれんぼする 雀かな     小林一茶

           茶の花に 暖かき日の しまいかな     高浜虚子

かみさぎニュース55号掲載分


かみさぎニュース54号掲載分

 日本の古名は「ハチス」。花が散った後の花托がハチの巣に似ているので、この名がつけられた。ハスの花とスイレンをさして仏教ではレンゲという。御仏は蓮の花の上に座していらっしゃる。仏教では聖なる花。お盆には、仏壇の前に蓮の葉も添えられる。

 蓮には実に逞しい生命力がある。それが有名な大賀ハス。2000年前の弥生

 時代の地層から大賀氏が蓮の実を発見。研究の末、開花に成功。 

  夜ふけて 蓮の浮葉の露の上に 玉と看るまで 宿る月影    源 実朝

 現代語訳:夜が更けて、蓮の浮き葉の露の上に玉のように月影が宿っている。


かみさぎニュース53号掲載分

 今月は菖蒲(しょうぶ)。5月の節句にあわせてこの植物にした。この節句はかつては男子の節句とされたが、今はこどもの日。

 節句に飾る花は花菖蒲(はなしょうぶ=かきつばた)。しかし、菖蒲湯で使われるのは香りが強く棒状の花が付く葉菖蒲。

 

 我(あ)れのみや かく恋すらむ かきつはた 

  丹(に)つらふ妹は いかにか あるらむ     万葉集

 現代語訳(私だけがこんなに恋い焦がれているのであろうか。カキツバタのようにほんのり紅をさした頬のあの娘は、いったい私のことをどう思っているのであろうか。)


かみさぎニュース52号掲載分

沖縄を除き、早春の先駆けとして咲くので、「まず咲く花」ということから、マンサクと呼ばれるようになったらしい。また、黄色の花がたくさん付くので「豊年満作」に通じてほしい、との願いを込めて命名されたとの説もある。日本の本州の太平洋側から九州にかけて分布し、各地の山林に多く自生するほか、花木として栽培もされる。葉はあせも、かぶれ、湿疹などに薬効がある。

    マンサクや 小雪となりし 朝の雨           水原秋櫻子

    昨日今日 マンサクの黄に 適(かな)う空        山田弘子


かみさぎニュース51号掲載分

 びわの開花は今頃から1月頃まで。初冬の季語。目立つことのない白い素朴な佇まい。果実は梅雨の頃、食べ頃に。しかし、びわの種には高濃度のシアン化合物が含まれている場合があり、体内で猛毒の青酸を発生させる、と。農林水産省で注意勧告が出されたほど。葉は漢方薬としてびわ茶に。打ち身、捻挫の時に葉を患部に当てると熱、痛みがとれる等として知られている。

 枇杷の花 冬木の中に にほえるを この世のものと 今こそは見め

                                齋藤茂吉

 枇杷の花 散りて ツワブキ 今を盛りなり           正岡子規      


かみさぎニュース50号掲載分

 今回は、上鷺宮3丁目の上鷺宮区民活動センター前の道に名付けられた、「とちの木通り」の「栃」。街路樹として14~15本植えられている。5~6月頃には花が咲く。秋にはクルミに似た房状の実が付き、中に栗のような実が入っている。デンプン、蛋白質を多く含み、縄文時代から食され飢饉には人々の命を救った。パリではマロニエ。

 栃の実や 幾日転げて ふもとまで   小林一茶

         栃老いて あるほどの実を こぼしけり 前田普羅

         栃の実の たわわな町に 着任す  野口ゆたか 


かみさぎニュース49号掲載分

 芙蓉の花を時々、近所で見かける。大輪の芙蓉もあれば、低木に小ぶりの花をたくさんつけた木芙蓉もある。平安時代頃から鑑賞されてはいるが品種は少ない。中国では芙蓉(水芙蓉)は蓮の花、とのこと。芙蓉は和歌にも俳句にも極めて少ない。

 一輪の 芙蓉に秋を とどめたり   高浜虚子

 秋津羽(あきつは)の うすくれなゐの 花の色に 

               夕日の陰を 重ねてぞみる   加納諸平

訳:トンボの羽のように薄い芙蓉の花びらに 淡い夕日の光を重ねてみると 何と味わいのあることよ

 


かみさぎニュース48号掲載分

 どの季節でも花屋の店頭で、一輪で最も存在感があるのは牡丹であろう。階下の季節は今頃の初夏。町内でも鉢植えの牡丹をよく見かける。牡丹の別名は「富貴花」「百花王」「花王」「花神」「深見草」…驚くほど大層な名前が付いている。原産は中国。元来は漢方として用いられていた。根の樹皮部分が漢方薬として珍重され、薬効は消炎、止血、鎮痛。

 

 牡丹花は 咲き定まりて静なり 花の占めたる 位置の確かさ  木下利玄

 牡丹散って うち重なりぬ 二三弁              与謝蕪村 


かみさぎニュース47号掲載分

 桜からバトンを受けるように色とりどりに咲く華麗な躑躅。特に武蔵丘高校近辺のツツジロードは美しい。躑躅の幼き思い出は、花を摘み、摘み口をなめると、ほのかに甘かった。甘いものが少なかった時代、貴重な花だった。しかし、躑躅の種には猛毒が含くまれているという。あな恐ろしや…

 岩つつじ 折り持てぞ見る 背子が着し

              くれなゐ染の 衣(きぬ)に似たれば  和泉式部

現代語訳:岩つつじを手折って、それをただ見つめています。その色合いは愛しい人が着ていた紅染の衣の色にとてもよく似ているので。     


かみさぎニュース46号掲載分

 実は柳は古来より初春にふさわしい植物とも言われています。柳は春になると落葉樹の中で、いち早く一斉に芽吹くことから生命力の象徴とみなされ、邪気を払う力を持つ植物といわれていました。特に春を感じるのは、細い糸状に垂れる枝に突然、若葉色の細やかな点が煙るように噴き出してくる頃です。それも一瞬。そして小さな葉になる。有名な短歌をご紹介します。

 

  やはらかに 柳あをめる 北上の 岸辺目に見ゆ 泣けと如くに

                               石川 啄木


かみさぎニュース45号掲載分

 あと二週間もすると新年を迎えます。そこで今回は縁起物とされる赤い実の「南天」をテーマにしました。南天は昔から「難を転じて福となす」「悪魔降伏の木」とされてきました。実にはのど飴として、葉には赤飯の上に置くと防腐効果がある等、薬効があり名実ともに人に役だっているようです。不思議なことに和歌にも、古典文学にも登場しません。そこで俳句を二句ご紹介します。

                   門松に 実ぎっしりの 実南天  山口誓子

 

                    南天の 赤き実偲ぶ 雪うさぎ  未詳


かみさぎニュース44号掲載分

 秋の味覚の「栗」をテーマにしました。

 

 瓜食(は)めば子ども思ほゆ 栗食(は)めばまして偲はゆ 

  いづくより来たりしものぞ 眼交(まなかひ)に 

   もとなかかりて 安寝(やすい)し寝(な)さぬ

                  万葉集巻5 802 山上憶良

現代語訳:旅先で瓜や栗を食べていると、これが好物の我が子を思い出す。

     子どもに食べさせたいと思うと愛おしさが募る。

     いかなる縁で我が子は私の所にやってきたのだろう。

    それを考えると、しきりに(もとなかかりて)子どもの顔が目の前に浮か

    んできて、なかなか寝つかれない。 (優しい憶良ならではの歌です。)


かみさぎニュース43号掲載分

 今回は目には見えない「風」をテーマにしました。日本の自然美を象徴する言葉に「花鳥風月」があります。その中で季節感を花と同様に感じさせる「風」。ご一緒に季節感を感じてみませんか?春には東風(こち)…夏には南風(はえ:真南の風)、秋は涼風(すずかぜ)…冬は空っ風…

 風に秋の足音を感じる和歌の代表作があります。

 

  秋来ぬと 目には清(さや)かに 見えねども 風の音にぞ 驚かれぬる 

                          古今和歌集 藤原敏行

  現代語訳:え?秋がもう来てしまった。目にははっきりとは見えないけれど

       も、微かにそよぐ風で驚かされた。 


かみさぎニュース42号掲載分

 かつては夏、日本の山野に日本原種といわれる山百合、笹百合、姫ユリ、鹿の子ユリ、乙女百合等が咲き乱れていたことでしょう。ユリは西洋で聖母マリアの象徴として…さらに家紋や国の紋章として描かれました。洋の東西で珍重されていたのですね。

 

夏の野の 茂みに咲ける姫ユリの 知らぬ恋は 苦しきものぞ 

               万葉集 大伴坂上郎女(いらつめ)

 

 現代語訳:夏の野の茂みにひっそりと咲いている姫ユリの花よ 

    その花のように人知れずあなた様を思っている恋は何と苦しいものか。


かみさぎニュース41号掲載分

七重八重 花は咲けども 山吹の

      実の(蓑)一つだに 無きぞ悲しき

              後拾遺和歌集 兼明親王

 600年ほど昔のこと。太田道灌が今の新宿の面影橋付近で突然の雨に…雨宿りで近くの農家へ…

 応対した娘に蓑(現代のレインコート)を所望。が彼女は咲いていた山吹を捧げるのみ。じつは(山吹はがならないのと同様に、貧しくて殿をお助けするさえない)実と蓑を掛けた親王の和歌を暗示した行動でした。

 兼明親王の歌のように自分の悲しい境遇を山吹に託した娘。道灌は、後に娘の純粋な真意を理解できなかった己を恥じ、歌道に精進し始めたのです。


かみさぎニュース40号掲載分

 福寿草は年末から新年にかけて花屋の店先に並びます。これはハウス栽培。本来は2月前後(旧暦の正月)に雪の中から芽を出す早春の花。縁起の良い花とされ、新年を飾る花…。「福」と「寿」を冠した良き名がつけられたようです。別名を元日草。

 不思議なことに万葉集などの古典には見つけられず。江戸時代からの俳句などに登場してきます。

 ふと笑う 夫婦二人や 福寿草     正岡子規  

   ボーナスの 無き我が前に 福寿草   鷹羽狩行    


かみさぎニュース39号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

「仙人は天に居れば天仙、地に居れば地仙、水に居れば水仙」。水辺に咲いていると美しく、ふくよかな香の花がまるで仙人のよう…との中国の書物からの名と言われています。

 

雪中花と言われる日本水仙は12月から2月まで咲いている花です。
またギリシャ神話のナルシスの話は特に有名で、東西文化の中で特筆すべき花のようです。しかし全草有毒で葉をニラ等と間違え中毒症状をきたす事故もあります。

 

そのにほい  桃より白し  水仙花       松尾 芭蕉

 

水仙の   香やこぼれても   雪の上     加賀 千代女


かみさぎニュース38号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

銀杏(公孫樹)は不思議な植物で約2億年前後の中生代から新生代にかけて地球上に繁栄後、氷河期でほぼ絶滅し、わずかに生き残ったのが現存の銀杏だそうです。

 

授業で習った記憶があります。銀杏は雌雄異株の風媒花です。実は茶碗蒸しに欠くことのできない銀杏(ぎんなん)。

 

金色(こんじき)の 小さき鳥の 形して いてふ散るなり 夕日の丘に

与謝野晶子

 

銀杏散る 童男童女 ひざまづき(子どもたちが美しい落葉を拾う様が可愛らしい)

川端 茅舎


かみさぎニュース37号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

曼珠沙華は不思議な形の花ですね。茎の上に花を乗せているように咲く。花と葉を同時に見ることはできません。

 

根には毒性がありますが、それでも昔は飢饉の時に良質な蛋白質のある根を潰し数日、水に晒して食した、と言います。

 

お彼岸に咲くのでヒガンバナという別名があるほどです。町内の歩道脇で見られます。曼珠沙華の大群落で有名なのが埼玉県の高麗にある巾着田です。

 

  くれなゐの 冠いただき 曼珠沙華             鷹羽 狩行


かみさぎニュース36号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

7月、8月に七夕祭りが全国津々浦々で行われます。

この祭りと切り離せない「竹」を取り上げました。


空洞の竹は古来より神聖で中に神が宿ると信じられていました。
かぐや姫がいい例ですね。
さらに竹は成長が早く生命力の象徴ともされました。子供の幸せを願い短冊にしたため、竹を飾り、そしてお星さまに祈る。みやびな世界です。

 

今回は正岡子規の俳句です。

  うれしさや  七夕竹の  中を行く

 

現代語訳:子ども達が七夕の笹を手に喜々として歩いてくる。
     その間をぬっていくと何という、うれしい心持になることよ。

     子規の温かさが感じられます。


かみさぎニュース35号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

今回は道端にひっそりと咲いているスミレの花。 芭蕉の「山路来て 何やらゆかし スミレ草」はよく知られています。

スミレを万葉集で探してみました。

 

山吹の 咲きたる野辺の ツボスミレ この春の雨に 盛りなりけり

高田女王(おおきみ)

 

現代語訳:山吹の咲き誇る野辺でもそれだけに目を奪われないで。
     スミレもたくさん咲いている。細く白く降る春雨の中でスミレも山吹に

     負けず盛りを迎えている。

 

   スミレは種で増えますので、道端で気に入った花に出会えたら種の時期まで待って自宅に蒔いてみるのも良いのでは……


かみさぎニュース34号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

今回は木へんに春の「椿」です。

いかにも春の使者という風情。古事記にも載っているようです。

また豊臣秀吉、徳川秀忠が愛した、と言われています。安土桃山時代から茶道の茶花として好まれ、それ以降、様々な品種が栽培されました。

 

さらに、和菓子の祖とされる椿餅が万葉集・源氏物語にも登場しています。

さて、椿に関連してよく知られている俳句と短歌を紹介しましょう。

 

  赤い椿 白い椿と 落ちにけり      河東 碧悟桐

 

  山寺の 石のきざはし(階段)下りくれば 椿こぼれぬ 右に左に

                               落合 直文


かみさぎニュース33号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

あと半月ほどで正月。新年を迎えるために、多くのお宅で門松を飾ることでしょう。

今回は町内どこでも出会える「松」を取り上げます。

 

「松」は「祀る」につながり神が宿る樹木と言われました。正月とは各家々が歳神(としがみ)様をお迎えする行事です。

 

歳神様とは家内安全、家族繁栄等をもたらす神であり、ご先祖様ともいえるようです。この神を迎える神聖な目印「依代(よりしろ)」が「門松」です。

 

今回は一休さんに登場してもらいましょう。

有名な歌を紹介します。

 

  門松は冥土(めいど)の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし

 

さすが一休さんですね。目の付け所が違います。


かみさぎニュース32号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

日本の秋に一番なじみ深い「紅葉」「黄葉」をテーマにしました。

さて、この二つの違いは時代の変遷のようです。

 

奈良時代には「黄葉」、平安時代から「紅葉」が和歌の主題だったようです。黄色を大切にした中国の影響の多寡等が要因との説も。

そこで秋のなじみ深い在原業平の歌を挙げました。

 

ちはやふる 神代も聞かず 竜田川 唐紅に 水括るとは 

在原 業平

 

現代語訳:様々に不思議なことが起こるという神代の昔でさえ、こんなことは聞いたことがない。

竜田川(奈良県の紅葉の名所)を、一面に散り敷いた真っ赤な紅葉が染め上げ、川の水面をまるで一枚の括り染めの布のように彩っているこの情景は…何とも言葉に表現できない…。

 

※括り染め:布の一部を摘まみ糸で巻締め、一部を白く染め抜く技法。

深紅に散り敷く紅葉とところどころに見える川の水との対比。


かみさぎニュース31号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

一昨年、ご紹介した秋の七草。

その一つ「撫子」を特集いたします。最近ではなでしこジャパンで「撫子」が有名になりました。

実は撫子には日本古来からの川原撫子(=大和撫子40cm~50cm)と茎の長さが5cm前後の西洋撫子があります。写真が原種の川原撫子で6月頃に花屋の店先に顔を出します。

かつては山野に咲き乱れていたことでしょう。万葉集には何首も登場します。

今回はそのうちの二首をご紹介します。

 

野辺見れば 撫子の花 咲きにけり 我が待つ秋は 近づくらしも 

詠み人未詳巻10の1972

現代語訳:野原に出てみると、撫子の花が咲き始めた。

私が待ち望んでいた秋が近づいてきたことに間違いない。

 

撫子が その花にもが 朝な朝な 手に取り持ちて 恋ぬ日なけむ

大伴家持巻3―408

現代語訳:あなたがこの撫子の花であったらいいのに。

そうすれば毎朝、毎日、手に抱いて恋しく思わない日はないだろうに。愛しいあなたよ。

婚約者の坂上大嬢(さかのうえのおおいらつめ)に贈った歌。


かみさぎニュース30号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

今回は「萱草(かんぞう)」。

ユリ科の花。漢方で有名な甘草は全く別のマメ科。左の「萱草」の花は、今から76年ほど前に亡き母が上鷺宮4~5丁目にかつてあった八成山の雑木林から持ち帰った花の子孫です。

萱草は別名「忘れ草」。人の憂いを忘れさせてくれるという中国の古典が原点。この花を詠み込んだ万葉集を紹介します。

 

忘れ草 垣もしみみに 植ゑたれど 醜(しこ)の醜草(しこくさ) なほ恋ひにけり

 

現代訳: 憂いを払う忘れ草を垣根にあふれるほど植えたけれども、バカな!話と全く違う。

全くバカな草だ!あなたを胸焦がすほど恋しく思う気持ちが忘れられないなんて!

(作者不詳 巻12 3062)


かみさぎニュース29号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

「藤」についてあることに気づきました。何と「藤」に関する姓が多いことか。藤原、藤田、斎藤、加藤、近藤…。

 

日本の姓は「藤」以外でも植物の名、自然界の森羅万象の名を取り込むという、他国には例をみない特色があります。

 

藤色と言いますが昔から紫は高貴な色でした。確実にこの地区で見られるのは上鷺東公園、八成公園等……。

では万葉集から一首、ご紹介します。

 

恋しけば 形見にせむと 我が宿に 植ゑし「藤波」 今咲きにけり

山辺 赤人 万葉集

 

現代語訳: あなた様をあまりにも恋しく思うあまり、あなた様の思い出にしようと、

私の家庭に植えた藤の花が今、真っ盛りに咲いてることです。

 


かみさぎニュース28号掲載分

上鷺宮区民センターの花だより

「かたくり」の花です。片栗と言えば片栗粉を思い浮かべますよね。昔はこの球根が使われていましたが、現代ではジャガイモのでんぷんが原料です。

 

3~4 月に4 ㎝位の小さな花が咲きます。今では絶滅危惧種。かつては日本の山野に絨毯のように咲いていました。群落は練馬区光が丘の西方にある「清水山憩いの森」で見ることができます。

 

もののふの 八十(やそ)をとめらが 汲みまがふ

寺井の上の かたかごの花

大伴家持 万葉集巻19-4143

 

現代訳:若い娘たちが皆で水を汲んでいる。その寺の井戸の傍らに咲くかたくりの花の何と美しいことよ。㊟「もののふ」は「八十」の枕詞です。


かみさぎニュース27号掲載分

今回のテーマは花でなく雪。雪月花という自然を愛でる古

来よりの言葉にある「雪」。その雪を詠み込んだ新年を迎え

るにふさわしい大好きな万葉集の一首を紹介します。

上鷺宮一丁目の畑にも雪が教科書に載っているかもしれませんね。各階層の人が身分を問わず4500 首余り創った万葉集中、最後を飾る大伴家持の歌です。

 

 

新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いや重(し)け吉事(よごと)

 

現代訳:新しき年の初めのこの初春の良き日。その日に降り積もる純白の雪のように、今年、良いことが

たくさん重なりますように。

皆様にとって来年が、家持の歌のように良いことが重なる年でありますように。


かみさぎニュース26号掲載分

紫陽花

かつて町内では多くの家に植えてあった柿。晩秋には家族総出で楽しげに柿の実を採る姿が、秋の風物詩でした。

しかし昨今は誰も採る人がなく、小鳥の啄むに任せるか、落ちるに任せるかというお宅が増え、柿には気の毒な時代になりました。柿は中国原産ですが、ヨーロッパでは「kaki」と言うそうです。

俳句を探しました。そこにはほのぼのとした庶民感覚があります。

 

祖 父(おほぢ)、親、孫の栄(さか)えや

柿、みかむ(ミカン) 

松尾芭蕉

訳=昔から代々、柿、蜜柑は家の繁栄の象徴であった

 

他 ・柿色の 日本の日暮れ 柿食えば 加藤 楸邨   ・家ごとに 柿の大木 家ゆたか 吉川 重

  ・この柿は 母の手植えと 叔母に聞く 福島 二美 ・柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺 正岡 子規  

<お詫びと訂正>

地域ニュース10 月15 日号の本コラムで、「柿食えば 鐘が鳴る鳴る法隆寺」は、

「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」が正しい表記です。

お詫びして訂正します。


かみさぎニュース25号掲載分

紫陽花

昨年ご紹介した秋の七草の中で万葉集最多を誇り詠まれていた花が「萩」。月見の花にも「萩」が・・・。秋のお彼岸に食べるのが「おはぎ:お萩」。かるたの中にも・・・。古来から美術工芸品にも「萩」が・・・。8,9月には町内のそこここに咲いています。


我が背子が 宿なる萩の 花咲かむ

秋の夕は 我を偲ばせ

                    

 

訳=私のあなた。その家の庭にもう萩の花が咲きますね。この秋の夕べには、どうぞ萩を愛でながら私のことを偲んでください。愛しいあなた。(万葉集より  作者:大原今城(いまき))


かみさぎニュース24号掲載分

紫陽花

紫陽花はどこにでも咲いています。原種は日本のガクアジサイだそうです。酸性土壌では青色、アルカリ土壌では桃色に発色。

今回は描写の美しい藤原定家の和歌です。


あぢさゐの 下葉にすだく 蛍をば

四ひらの数の 添ふかとぞ見る


現代語訳:紫陽花の花が夕闇に溶けはじめると、その花と入れ替わるように蛍が飛び交い始め、いつの間にか薄暗い紫陽花の下葉に蛍が光を発しながらたくさん集まってきた。何とその様子が四輪の紫陽花にさらに一輪が増えたかのように見えている。(拾遺愚草 上巻より)


かみさぎニュース23号掲載分

桃の花

写真は今咲いている5弁一重の桃の花です。

桃の花は多種にわたりますが、これが実を結ぶ桃の花です。

今回は教科書にも載る桃の花を詠み込んだ万葉集の秀歌を紹介。


春の苑(その) 紅(くれなゐ)にほふ桃の花

下照る道に 出(い)で立つ娘子(をとめ)


現代語訳:春の庭で一面に桃の花が紅色に咲いています。その花々に照らされ光に映える小道に、桃の花に見とれて、ほのかに顔を桃色に染めて佇んでいる美しき乙女よ…(巻十九 大伴家持)春の庭で桃の花の美しさと可憐な乙女の競演。

※2月号の菅原道真の歌は百人一首の中には入っていませんでした。お詫びし訂正いたします。


かみさぎニュース22号掲載分

梅の花

梅の花は早春の寒さの中で凛と咲き、上品な香りも人を惹きつけます。その上、実の梅干は古来より超健康食品。今回は多くの方が記憶の隅にある? 和歌を紹介します。

東風(こち)吹かば にほひをこせよ梅の花

主(あるじ)なしとて 春を忘るな(春な忘れそ)

 

現代語訳:春になり東風が吹くようになったら、心ならずも大宰府にいる私にその香りを送ってくれ、わが家の梅よ。主人の私がいなくても、咲く時期の春を忘れないでくれ(菅原道真 拾遺和歌集掲載)



かみさぎニュース21号掲載分

もう、半月ほどで新年ですね。今回は1月7日の七草粥に向けて「春の七草」を紹介します。

「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、これぞ七草」この歌の中でホトケノザは聞いたことがないと思います。写真がホトケノザです。

年明けのスーパー等に七草粥セットとして売っています。


古来から、これを食すと1年間、無病息災といわれています。

七草の写真は北鷺町会のホームページに掲載していますので、ご覧ください。


※ナズナ=ペンペン草、ゴギョウ=ははこ草、ハコベラ=はこべ、スズナ=蕪


かみさぎニュース20号掲載分

爽やかな秋。町内のどこを歩いても菊に出会えます。
日本では桜と並んで国の花ともいえる存在です。古来より野菊として故郷の山野を彩っていたのでしょう。

さて、今回は菊を詠み込んだ百人一首を紹介します。

心あてに 折らばや折らむ 初霜の

  おきまどはせる 白菊の花

(訳=たぶん、これが白菊だと思い手折ってみよう。初霜が降りて一面真っ白になってわかりにくくなってしまった白菊を)


生け垣でよく目にする小菊が好きです。




かみさぎニュース19号掲載分

(尾花=ススキ)

(朝顔=桔梗)

萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花また藤袴 朝顔の花

(万葉集 巻八1538)山上憶良

             

「秋の七草」を詠みこんだ有名な和歌です。葛以外は上鷺宮近辺で目にすることができます。

特に萩、尾花は町内どこでも出会えます。撫子、桔梗、藤袴、女郎花は花店で買えますが葛は山野で繁茂するので町内では見られません。

「秋の七草」に関する和歌等は素晴らしい作品が多いので別の機会に紹介します。